本来、陣羽織とは戦場で鎧の上に羽織る物。
錦が使われていたりと、生地も仕立てもこだわって作られた物です。
旅館やホテルなどで提供される陣羽織は、とても簡易的なもので「袖なし半天」とも呼ばれたりします。
とは言え、陣羽織にも色々あって、それぞれ使いみちにより色々な仕様で作られます。
今回注文をいただいのは、本格的な鎧の上に着る陣羽織。
「こんどのイベントで、実行委員会の人がそろいの陣羽織を着たい、って言ってるんだけど。これって作れる？」
サンプルがあるので何とか作れると思うのですが、色々と勉強しながらの制作となります。
見本品
さて、これをどうやって作ろうか、縫製出来るところはあるのだろうか。
ふと頭に浮かんだのが、業務用和装専門の縫製屋さん。
その社長に協力を仰いだら、快くOKしてくれました。
生産枚数は10枚。
イベントまで約1.5カ月。
なんとかなるでしょう、とこの時までは軽く考えていました。
生地はサテン生地を使います。
生地の手配も終わり、生地が入荷するまでに型紙の製作にかかります。
さてどうしようか、ゴールドの縁取りをどうやって出せばよいのか。
とりあえず裏地を余分に縫いつけ、芯を入れて縫製すれば・・・出来ない、シワが寄ります。
しかも芯が動いてしまう。
改めて大変なものだということがわかりました。
どうやって作ろうか、もしかしてこちらの技術では無理なのか・・。
縫製屋の大将が色々な方法を試行錯誤してくれます。
それに対し、こちらも色々とアドバイス。
普通なら喧嘩になりそうなところですが、そこは長年の信頼関係が補ってくれます。
結局、紙の芯と接着剤、両面テープなどを駆使し、縫い合わせる方法を縫製屋の社長が発見しました。
しかしこんなに面倒な縫製をやってくれる人は限られます。
一番上手な縫製技術を持っている方にお願いし、なんとか一日1枚の仕上げ。
イベントの日にちは近付いてくるし、陣羽織は出来ないし・・・・
胃がひっくりかえるような日々の後、ようやく注文枚数が完成しました。
若干の生地質の違いはありますが、ほぼ見本と変わらない物が出来ました。
はじめて見た人は見分けがつかないくらい。
刺繍部分もほとんど同じです。
多くは載せられませんが色々な技術を駆使して作られています。
これほど苦労したものは、他にもありません。
ただ作ってみないとわからないことも多く、結局見積もりよりもかなりオーバーしてしまいました。
特に背中の刺繍は、かなり大きいために型代だけでも20万円を超えます。
刺繍込みで、一着25,000円ほどでしょうか。
今回は、業務用の和装専門の縫製屋さんにかなり助けていただきました。
色々な意味で、一つレベルが上がった気がします。
